ヤマノススメのここなちゃん(青羽ここな)で考える経済格差問題③
みなさんこんにちは。Morimoriです。
今回は「ヤマノススメのここなちゃん(青羽ここな)でかんがえる経済格差問題」の第3弾です。
今回は前回の考察を踏まえた上で考えていきたいと思います。
↓前回の記事
ここなちゃんが貧困層にとどまっているのは、親族にその原因がある可能性を示唆しました。
もし青羽家の貧困が親世代の収入という点にあるとしたら、青羽家の今後はどうなってしまうのでしょうか…
そして非正規雇用は非常に所得が不安定であり、またその所得の不安定さはさまざまな影響をもたらしていく。例えば両親ともに非正規雇用で、所得が不安定であると、その子供たちも同じように所得が不安定な一生を送る可能性が否定できないし、一部の実証研究はそのことを示唆しています(麻木久仁子・田村秀男・田中秀臣 『日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕』 藤原書店、2012年、89-90頁)
所得が不安定な青羽家は、お金持ちであるあおい・ひなたと比べて教育にかけられる金額は相対的に低くなります、そうなると必然的に社会的上昇する機会を失ってしまう可能性が高まります。
ここなちゃん自身が社会的上昇の切符を逃すばかりでなく、次の世代にも貧困が持ち越されてしまう可能性があるということですね。
現実は非情です。
以前こんな調査を行った人がいた。アメリカの優秀な大学、一六四校の学生を対象に統計を取り、彼らの経済的なバックグラウンドを調べようとしたのだ。(中略)最も優秀な大学では、貧しい家庭出身の学生は、たった三%しかいなかった。七〇%以上が、裕福な家庭出身だったのだ(マイケル・サンデル 『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下)』 NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム・小林正弥・杉田晶子訳、早川書房、2010年、56頁)
やはりこのようなデータが出ますね。
もちろんここなちゃんは作中OPにてテストで100点を取っている描写がありましたし、あおい達の学校に特待生(?)として奨学金を貰って入学したいというほどですから、この限りではないと思いますが。
ここなちゃん自身とても優秀で、学力や身体能力において特段あおい達に劣っている点はないように思います。
しかしあおい達に比べて金銭面では圧倒的に不利であるというという点は揺るぎません。
しかし上記の引用した文章から考えるに、貧困層から富裕層にジャンプアップすることはかなり困難なのかもしれません。
続くかも
「ヤマノススメのここなちゃん(青羽ここな)で考える経済格差問題」番外編
みなさんこんにちは。Morimoriです。
今回は「ヤマノススメのここなちゃん(青羽ここな)で経済格差問題」の番外編です。
ここまで2回にわたって「ヤマノススメのここなちゃん(青羽ここな)でかんがえる経済格差問題」と称し考察してきました。
記事を書くにあたって参考にした文献と映像作品を紹介したいと思います。
映像作品はもちろんこれ「ヤマノススメ」です。
あおひなたまらねぇぜ。
OVAの「おもいでプレゼント」ではここなちゃんにフォーカスした作品となっているので必見です。
そして参考文献ですが以下の2冊です。
特に 伊藤修氏の「日本の経済ー歴史・現状・論点」は明治から2000年代前半までの日本の経済についてわかりやすくまとまっていました。とても分かりやすく楽しく読めました。
「ヤマノススメのここなちゃん(青羽ここな)でかんがえる経済格差問題」の第三回目で会いましょう。
ぜひ読んでほしい本②「ポピュリズムとは何かー民主主義の敵か、改革の希望か」中公新書
ぜひ読んでほしい本②
「ポピュリズムとは何か―民主主義の敵か、改革の希望か」
はい。今回は「ぜひ読んでほしい本」の第二弾です。
今回紹介する本は 水島治郎 著『ポピュリズムとは何か―民主主義の敵か、改革の希望か―』中公新書です。
第一章 ポピュリズムとは何か
第二章 解放の論理 ―南北アメリカにおける誕生と発展―
第三章 抑圧の論理―ヨーロッパ極右政党の変貌―
第四章 リベラルゆえの「反イスラム」―環境・福祉先進国の葛藤―
第五章 国民投票のパラドクス―スイスは理想の国か―
第六章 イギリスのEU離脱―「置き去りにされた人々」の逆転劇―
第七章 グローバル化するポピュリズム
今回選んだ本は最近何かと話題の「ポピュリズム」に関連する本です。
元来ポピュリズムは政治的に未発達な地域でのみ見られる現象でありましたが、イタリア・ベルルスコーニの躍進を皮切りに欧州・欧米各国でみられるようになりました。
本書はラテンアメリカ型のポピュリズムと欧州型のポピュリズムが対比されており、とても分かりやすいです。
本書第七章にて、水島氏はポピュリズムを「ディナーパーティーの泥酔客」と表現していました。
この表現を見たとき「ポピュリズム」という現象とは何なのかがスッと飲み込めたような気がしました。
大学で政治学のレポート課題が出て困っている方・ポピュリズムに興味がある方ぜひ手に取って読んでみてください。
ヤマノススメのここなちゃん(青羽ここな)で考える経済格差問題②
みなさんこんにちは。Morimoriです。
「ヤマノススメのここなちゃん(青羽ここな)でかんがえる経済格差問題」の第2弾です。
前回は栗原昇氏の言葉を引用し、「ここなちゃん」が階層間(貧困層⇔富裕層)の移動を行うことが出来るか・また移動するためにはどうすればいいかを考察しました。
今回は「ここなちゃん」がなぜ貧困層の階層に固定されているかについて考えていきたいと思います。
今回は伊藤修氏を引用し、それをもとに考察します。参考文献は一番下に貼っておきますので、気になった方はぜひ手に取ってみてください。
富の差をもたらす要因は少なくとも四つある。第一は「当初の富」である。人は生まれた時点で平等ではなく、親から受け継ぐ富の差は放っておけばさらに拡大する性質をもつ。第二は「素質」である。第三は良い先生、先輩同輩などの環境に恵まれる「運」である。そして第四が本人の「努力」である。(中略)「富は努力が生み出す」、「貧富の差は努力の差」という命題は誤りであり、富すべて本人に帰属して当然だという根拠はない(伊藤修 『日本の経済-歴史・現状・論点』 中央公論新社〈中公新書〉、2007年、163-164頁)
分かりやすくまとめると以下のようになります。
貧富の差をもたらす要因は4つ
先天的要因
① 親族の持つ富の差→これは放置すると、より貧富の差が拡大する
② 本人の素質
後天的要因
③ 交友関係→教師や先輩・同輩のめぐりあわせ
④ (富を得るための)本人の努力
上記を加味したうえでここなちゃんはどうだろうか。
先天的な要因の①に関しては、劇中どのシーンを切り取っても、あおい・ひなた・かえでと比較し圧倒的に不利であることは明白ですね。
一方②に関してはここなちゃんは圧倒的に優位に立っています。身体能力に関しては登山装備があおいに比べて不利なのにもかかわらず、あおいよりも余裕をもって登山をしている描写が劇中に多々ありました。加えてOVAの「おもいでプレゼント」においてもその身体能力の高さを発揮していました。(遊具のシーン。)
また、容姿の差が経済的な格差につながるというデータもあります。(続編にて触れる予定)この点を鑑みてもここなちゃんは高いポテンシャルを有しているといえます。
先天的要因ではここなちゃんは1勝1敗です。
それでは後天的な要因はどうでしょうか。
③の交友関係に関しては「あおい・ひなた・かえで・ほのか」と、良い友人に巡り合えたのではないでしょうか。
かけがえのないいい友人に巡り合えたのではないでしょうか。(二度目)
④に関してここなちゃんが高校進学にあたって特待生向けの奨学金を利用しようとしていることが伺えるシーンがあります。
ええ娘や・・・めっちゃ努力してますよ・・・
後天的要因に関しては2戦2勝でした。総合では3勝1敗でここなちゃんの勝ちです。
上記からわかる通り伊藤修氏の貧富の差をもたらす要因のうち、ここなちゃんに当てはまるのはたった一つ「親の富の差」だけです。
ここなちゃんが将来どうなるかに関しては、作者である「しろ先生」にしかわかりませんが、現状ここなちゃんがあおい達と比べて貧しいのは、親族に原因がある可能性が高いと言わざるをえませんね。
第三弾&番外編更新しました。↓
ヤマノススメのここなちゃん(青羽ここな)で考える経済格差問題①
格差社会とは、国民の間で収入や財産によって貧困層と富裕層という階層が生じ、階層間を移動することが困難な状況になっている社会のことです(栗原昇・ダイヤモンド社 『図解 わかる!経済のしくみ[新版]』 ダイヤモンド社、2010年、126頁)栗原昇
今回考えたいのは「ここなちゃんは貧困から抜け出すことはできるか」という点です。
その前にまずみなさん「ヤマノススメ」というアニメをご存じだろうか。
ヤマノススメとはインドア趣味で高所恐怖症の主人公の少女・あおいが、アウトドア志向の幼馴染・ひなたとの再会をきっかけとして、幼い頃に見た山頂での来光を再び目にするべく、登山に臨む物語である。(Wikipedia)
まぁ一言で言うならありがちな趣味アニメなわけです。秀逸なキャラクターデザイン、良質な作画作品の雰囲気にマッチした音楽その全てが絶妙に組み合わさったとても素晴らしい仕上がりですので未視聴の方はぜひ見てください。(ダイマ)
とまぁ宣伝はこれくらいにして、本題に入ります。
ヤマノススメを見たことがある人はすでにピンときていることと思います。
そうこの「ヤマノススメ」というアニメ、主人公一行の経済格差がすごいことになっているのです。
未視聴の方へ百聞は一見に如かず。画像でご覧ください。
これはひどい。主人公あおいの親友ひなたの家の風呂はなんと檜風呂…かたやここなちゃんは…
登山趣味はお金のかかるモノとはいえ、ここまで露骨な経済格差を描く必要があったのかは疑問ですが、この「経済格差」というスパイスが「ヤマノススメ」という作品の人気を不動のものにしたという見方もできるのかなぁと。
さて今回の議題「ここなちゃんが貧困から抜け出すことはできるか」です。
冒頭に栗原昇氏の言葉を引用した通り、元も子もないのですが、格差社会が構築されると、一度所属した階層から階層を跨いで移動する(貧困層⇔富裕層)は非常に困難になります。
しかし技術の進歩はすさまじく、インターネットを用いてお金を稼ぐことが以前よりも容易となりました。現在においてはすべてが上記の通りではなくなったとは思います。
インターネットでお金を稼ぐというと真っ先に思いつくのはYouTubeでしょう。
このYouTubeを活用しここなちゃんはお金持ちになることはできるでしょうか。
ここなちゃん自身は容姿端麗で声もかわいいですので、インターネットで稼ぐポテンシャルは非常に高いと考えられますし、インターネット上でお金を稼ぐことは十分可能可能かもしれません。
(もしここなちゃんがYouTubeで生放送していたら、私は雨のようにスパチャをしていたでしょうしね。)
しかしここなちゃんの家にYouTubeに配信を行うことが出来る環境が整っているでしょうか、また配信を始めるとして十分な設備投資をすることが出来るでしょうか。やはりここが一番の問題だと思います。
原作の開始時期は2011年。iPhoneでいえば4s、Windowsでいうならば7がメインだった頃です。YouTubeのスーパーチャット機能の実装は2017年です。
スパチャ機能登場の6年も前にインターネットで稼ごうと奮起し、撮影用の機材ないしスマートフォン、加えて編集用のPC、インターネット環境を整えることに投資することは果たして出来たでしょうか。
ここなちゃんは貧困層から富裕層にジャンプアップすることはできるのでしょうか・・・
二話更新しました↓
ぜひ読んでほしい本①「ヨーロッパのデモクラシー」ナカニシヤ出版
はい。今回は「ぜひ読んでほしい本」の第一回目です。
第一回目に選んだ本は
「ヨーロッパのデモクラシー」
網谷龍介, 伊藤武, 成廣孝編
ナカニシヤ出版 です。
正直この本をしっかり一冊読むだけで、ヨーロッパ政治の現状を知ることが出来ます。
内容説明
民主主義の赤字、新自由主義、移民とポピュリズム、政党不信と大連立…。民主主義をめぐるさまざまな困難に立ち向かうヨーロッパ政治のいま。欧州29ヵ国の最新の政治情勢を紹介する決定版。
目次
第1章 ヨーロッパ型デモクラシーの特徴
第2章 EU
第3章 ドイツ
第4章 フランス
第5章 イギリス
第6章 イタリア
第7章 オランダ・ベルギー
第8章 北欧諸国
第9章 南欧諸国
第10章 中欧諸国
第11章 ルーマニア・ブルガリア
「BOOKデータベース」 より
ヨーロッパ、EUといった大きな枠組みから英仏独といった主要な国、北欧、東欧まで細かく書かれています。
その国の歴史的な背景などバックグラウンド・各国の制度も解説してくれているので
私は楽しく読むことが出来ました。
私は本書のオランダ・ベルギーの章が個人的にとても面白かったと思ってます。
大学で政治学のレポートの課題が出て困っている人・政治学の卒論の題材とする国を探している人・ヨーロッパに興味がある人ぜひ手に取って読んでみてください。
SHIROBAKOの「みゃーもり(宮森あおい)」重い女説を追う
先日2/29日にSHIROBAKOの劇場版が公開されましたね。みなさんは鑑賞したでしょうか?
私は当時就職活動の真っ最中でしたので、「就活が終わったらみにいくかー」などと軽く考えていました。ところがぎっちょん現実は非情です。私が就活を終わらせたときには世は大コロナパンデミック時代。とても「都内の映画館にSHIROBAKO見に行くわw!」などと言えるわけもなく、おとなしく劇場版の視聴を諦め、アニメシリーズの復習をする方向にシフトしました。
5年前に見たときには「アニメ制作って大変なんだなぁ」位しか感じなかった私ですが、いざ自分が社会に出ることが確定した後に視聴すると心にクるものがあるなぁとしみじみ感じるとともに、“みゃーもりすこ”という気持ちが再燃してきたわけです。
さてこの“みゃーもり”ですが、一部界隈では「重い女」「ヒモ男を養うタイプ」といわれているのはご存知でしょうか。
緊急事態宣言下につき時間は無限です。折角SHIROBAKO本編を見直す機会を得たわけですから、「本当にみゃーもりは「重い女」「ヒモ男を養うタイプ」なのかについて考えてみたいと思います。
(この考察は多分に私の妄想が含まれています。真に受けないようにしてください。つまりフィクションです。)
① みゃーもりの幻覚について
作中でみゃーもりは仕事上や私生活で困難に遭遇すると必ずと言っていいほど幻覚を見ていますよね。あの2体の人形が自立してみゃーもりの不平不満を代弁しているやつです。
脳内で完結する妄想ならわかるんですよ。しかし作中でみゃーもりはその人形たちと実際に会話しているわけです。さながらPERFECT BLUEなわけですよ。
これはメンヘラの特徴でもある「すべて他責にするアレ」だと考えられます。ご存知の通りすべての事象においてメンヘラは決して自分に対する責任を認知しません。すべての事象に対してです。この不条理は自分のせいではないと言い聞かせるための行動である可能性があると思います。
つらつら書いてきましたが、そもそも幻覚をみて、なおかつその幻覚と会話している時点で重いよね。
② みゃーもりの夢について
作中でみゃーもりは自身の最終着地地点を見つけられずにいました。(意識高い系な表現するならキャリアパスというやつです)
みゃーもりはアニメの制作進行という仕事に忙殺され、目の前の仕事をこなすだけで精いっぱい(現実のアニメ制作場面であればとても有能とのこと)で自身の夢・最終目標を見つけられず苦悩します。そんなみゃーもりを横目に同期のメンバーや後輩たちは自身の夢を見つけ奮闘していくわけです。
みゃーもりは明確な夢を持ち、その実現のために打ち込む友人たちの姿に尊敬の念を抱き、その支援を厭わずむしろ積極的なわけです。「夢に挑戦する人の姿に尊敬の念を抱く、またその支援を厭わない」つまり他人の夢に自分を重ねている部分があるわけですよ。これバンドマンにひっかかるわ。(確信)
べつに夢見るバンドマンを悪く言うわけではないのですが、多くの場合バンドマンはひたむきに夢を追いかけている、中の上以上の顔面偏差値を持つ、かつ母性本能をくすぐるような適度なだらしなさを持っています。この点みゃーもりは引っかかる可能性があるなぁと思うのです。
加えてみゃーもりには仕事以外では物事を決めきれないことがあります。みゃーもりは短大の経済学部卒。自身の進路という人生において重要な選択の局面で、アニメ関係の学校に進む道を選べなかったことを負い目に感じている描写が1クール目の就活のシーンにありました。
バンドマンの多くは音楽活動の妨げになると、大学を中退したり、そもそも進学しないことが多いのです。夢追い人は自身の夢を追っているわけですから、進路を迷うことはありません。たとえそれが中長期的に見て損をする可能性があってもです。
自分の夢に向かって一歩踏み出しきれなかった経験を持つみゃーもりだからこそ、一途に音楽で成功するという道を進み続けるバンドマンに惚れる可能性があるのではと。
ここまで長々と考察と称した妄想を垂れ流してきたわけですが、正直「制作の人そこまで考えてないと思うよ」といわれればそれで終わりなことも重々理解しています。しかし公式から与えられる寡少な情報の中から、自分なりの考察・妄想していくことが楽しいのです。
公式が仮にみゃーもりは「重い女」でも「メンヘラ」でも「ヒモ男を養うタイプ」でもないと声明を出したとしても関係ないのです。別に公式が勝手に言ってるだけだから。
私の中でのみゃーもりは「重い女」で「メンヘラ」で「ヒモ男を養うタイプ」の女性です。勝手に自分の中で思っているだけです。でも決してこんなクソみたいな妄想を他人に押し付けたりしないし、公式に凸したりしません。だって自分の妄想だし。妄想と現実を区別できなくなったらおしまいです。
公式と自分の解釈が違うと思うのならば、その世界観や妄想を同人誌やSSなどに昇華すればいいだけの話です。もちろん公式の設定を理解したうえでの話ですよ。「公式はこう言ってるけど、私はこう思うな」これでいいと思うのです。
それでは。